エジプト〜カイロ編 6【食の楽しみ 2】

カイロでは、紅海や地中海から水揚げされて来る魚介類が豊富で、なかなか美味しい海の幸を食卓で楽しめます。

勿論海辺の町に出かけてその日にとれたばかりの魚や大きな海老を自分たちで選んで好みの料理方で出して貰うのもワクワクするものです。

かつてギリシャ人が支配していた時代の都アレクサンドリアで食したイカのグリルの味が忘れられません。

かなりの肉厚で、成程日本で食べるイカの繊細さは無いかも知れませんが柔らかさを残しながらプチっとかみ切る瞬間の快感、力強い食感には脱帽でした。

(なんて食いしん坊なのでしょう、、旅の記憶の中で鮮明に残っているのが、美味しかったものの味!だとは。。)


(青空魚屋の様子)

イスラム教徒は豚肉を食べる事を禁じられています。

それで豚肉の売買はこの国に住む約5%ばかりのキリスト教徒が一手に扱っています。

自家製のベーコンやハムは昔ながらの製造で、保存料など使っていないので香り高く旨味が凝縮された味を保っているようです。

イスラム教徒の庶民は牛肉か羊肉のひき肉を串に刺して焼いたコフタを好んで食べるようです。


カイロから更に南西部に行きますと砂漠地帯が始まり、黄色っぽい砂が目に眩しいほどギラギラした太陽を反射して蜃気楼が見えるのもこのような状況下なのかなあと考えていると、急に緑のオアシスが出現したのです!

塀に囲まれた村の中に入り、とある入口から階段を上り詰めた所には文字通りの楽園、とでもいいましょうか、鮮やかなブーゲンビリアが咲き乱れ、緑の葉も濃い樹々、涼しげな音を奏でる噴水の傍に幾つかのコテージが建っていて、そこはホテルレストランだったのです。

熱風、熱砂の中で働く庶民の村とはまさしく別世界で暮らす金持ち階級、その余りの格差に鼻白む思いもしました。。

ですがそこで供された鳩肉詰め物のオーブン焼きには驚嘆したのも確かなのです。

鳩肉はエジプトでも結構ポピュラーな食べ物で、シェフ達は彼らの自慢のレシピをそれぞれ持っているようです。


中東世界の菓子類は、とにかくとんでもなく甘いです!(これは私の印象ですが同じように思う人は少なくありません!)

胡麻を沢山使った、「かみなりおこし」に似た食感のお菓子は蜂蜜で固められていて、あまり甘すぎなければ日本人は好きかな、と思います。

その他は大体がまず油かバターで揚げたものの蜜漬け、のようなタイプのお菓子が多いです。 


かの≪千夜一夜物語≫の中で第九百六十夜の頃(Mardrus版、岩波文庫から)カイロが舞台となった≪蜂蜜入りの乱れ髪菓子ケナファと靴直しの禍をまき散らす女房との物語≫という何とも長い題名の、抱腹絶倒のお話が語られていて、この乱れ髪菓子--揚げ菓子がバターと蜂蜜に漬けてあるものから大きな一辺を切り取って、菓子屋が主人公に渡すシーンを思い出し、「わあ、これだ!」と思ってしまいました。

千夜一夜物語の中ではカイロは何度も主要な舞台となって出てきます。


今のイスラム社会ではアルコールの飲酒は厳禁ですが、この千夜一夜物語の中ではアラーを唯一の神として何度も祈りを唱えながらも、登場人物は結構〈飲めや食えや〉していて葡萄酒はしょっちゅう出てくるし、この世の楽しみを謳歌しているように感じられます。

原始キリスト教の時代も規則に雁字搦めにされず、人々は素朴な信仰を持っていたのだろうし、イスラム教もかつてはその様なおおらかさを持っていたのでしょうね。。。

(次の章は【女性たち】です。)

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